作業員から個人事業主へ——人生を変えた、あの日の決断

前編|現場しか知らなかった自分が、一歩踏み出した日

昔の自分は、税金なんて「勝手に引かれるもの」だと思っていた。
でも、その前に自分の人生そのものを変える“決断”があった。
1

社長への直談判から始まった

社長へ管理の仕事をやらせてくださいと直談判する主人公
根拠はなかった。それでも「やらせてください」と言いに行った。

設備の作業員として働いていた会社は、作業員と施工管理の両方を扱っていた。圧倒的に作業員が多い会社だったが、管理の方が稼げることは肌でわかっていた。

だったら管理をやらせてくれと、社長に直談判した。

「営業に行ってくれ」と頼んだのだ。会社側としても管理の方が儲かる。むしろ大歓迎だった。

ただ自分は管理としては完全な初心者。それでも設備の仕事をずっとやってきた自負があった。

「何とかいける」

そんな根拠のない自信だけはあった。

2

初めての面接、経歴を全部話した

設備会社の面接で現場経験を話す主人公
完全な未経験ではない。現場を知っていることが強みになった。

最初の設備会社への面接。自分の経歴を包み隠さず全部話した。

未経験ではあるが設備の現場で働いてきたこと。配管材の名称もある程度わかること。

面接官の表情が変わったのがわかった。完全な未経験より、現場を知っている人間の方が扱いやすいのだろう。二つ返事で派遣先が決まった。

こうして施工管理としての日々がスタートした。

3

作業員との違いに驚いた

作業員時代と施工管理になってからの収入安定の違い
同じ現場の仕事でも、働き方が変わると生活の不安が変わった。

働き始めてすぐ、作業員時代との違いに気づいた。

作業員は日給月給だった。休めばその分収入が減る。お盆やGWのような長期休暇は死活問題で、他の現場を必死に探した記憶がある。

周りの人からすれば、連休は嬉しい時間かもしれない。でも当時の自分にとっては少し違った。

カレンダーの赤い日が増えるたびに、先に頭に浮かぶのは「今月いくら減るんだろう」だった。

だから正直、世間が楽しみにしている大型連休が、少し怖かった時期もある。

しかし管理は違った。

設備会社との契約は月単位。平日でも現場の都合で休みになった場合は基本給に変化はない。

土曜や祝日に出勤すれば残業代として別途請求できる。

お盆もGWも悠々自適に休めた。作業員時代には考えられなかったことだ。

4

妻との冬の時代

給料日前に財布を見て悩む主人公を妻が励ます場面
苦しい時期に、一緒に踏ん張ってくれた存在があった。

その分残業は多かった。でも不思議と苦にならなかった。

振り返れば、あの頃は決して余裕のある生活ではなかった。

給料日前になると財布の中身を何度も確認したこともあったし、「今月は少し厳しいな」と夫婦で話したことも一度や二度じゃない。

それでも妻は文句ひとつ言わず、自分が前を向けるように支えてくれた。

楽しい時だけじゃない。苦しい時期も、将来が見えない時期も、一緒に踏ん張ってくれた。

だからこそ、施工管理として収入が安定し始めた時、心の中で最初に思ったのは、

「やっと少し楽をさせてあげられるかもしれない」

だった。

5

辞めようと思ってます——その一言が人生を変えた

現場事務所で所長から直接取引を提案される主人公
転職相談のつもりだった一言が、個人事業主への入口になった。

施工管理として働く中で、ふと思った。

今の会社より基本給が高いところへ移ってもっと稼げないか——そう考えて転職を検討し始めた。

ただ一つ気がかりなことがあった。今お世話になっているこの設備会社の現場からは離れたくなかったのだ。

「私、今の会社辞めようと思ってるんですけど……」

言いかけた瞬間、所長の顔色が変わった。

「今いなくなられたら困る」

話を聞いてもらうと、所長からこんな提案をされた。

「それならうちの会社と直接取引きするのはどう?」

個人事業主としての人生が、この瞬間から始まった。

次回予告|後編へ続く

個人事業主になれたのはよかった。
でも、本当の衝撃はここからだった。

青色申告。経費。還付金。控除。

知らないだけで、何十万円も差がつく世界。

現場しか知らなかった自分が、初めて「知識も武器になる」と実感した話を、後編でお届けします。

コメント